Spotify、ポッドキャスト黒字化へ正念場

オバマ元大統領夫妻や英国のヘンリー王子夫妻など著名人と大型契約を結び、ポッドキャストスタジオ2社を$286M(371億8,000万円)で買収、独占コンテンツに$250,000(3,250万円)以上を支払うなど「ポッドキャスト帝国」の構築に$1B(1,300億円)以上を投資してきたSpotifyが、事業の黒字化に向けいよいよ正念場を迎えています。広告収入の拡大は新規リスナーの獲得と維持が大前提であり、膨大なコンテンツ投資を生かせるかが試されます。

 

Washington Postによると、Spotifyのポッドキャスト事業への投資はまだ実っておらず、関係者は同紙にポッドキャスト番組の大半は黒字化していないと話しています。全社的にも業績は安定しておらず、1~6月期は約$565M(734億5,000万円)の赤字でした。

 

IABは、米国のポッドキャスト売上が今年、2022年比で25%増の$2.3B(2,990億円)に達し、2025年には倍以上に増加するとの見通しを示しています。しかし、$200B(26兆円)とされるデジタル広告市場全体からみればその規模は小さく、ポッドキャストはSpotifyが当初期待した「もうかる事業」にはまだ育っていません。「(Spotifyは)市場規模(の小ささ)に対して賭け方を誤った」との指摘も、業界関係者の間で聞かれます。

 

ポッドキャストのリスナーは増えていますが、競合サービスも多く、Spotifyにとって独占コンテンツによる新規リスナー獲得は難しいのが現状です。しかし、同社によると有料加入者数は6月時点で2億2,000万人、ポッドキャストリスナーは2019年時点の10倍にあたる1億人超に増えており、目標とするポッドキャスト事業の2024年黒字化に向けて順調に推移しているとしています。

 

黒字化を求める投資家からの圧力を受け、Spotifyは人員解雇や番組数の削減、サブスク料金の値上げで赤字縮小を図っていますが、ポッドキャストで苦戦してもほかに黒字事業を持つAmazonやApple、Googleなど競合テック大手とは危機感が違います。

 

そこで着手したのが、クリエイターとのリスク共有です。関係者によると、Spotifyは最近、人気コメディアンのTrevor Noahに$4M(5億2,000万円)を支払い、その投資をカバーするためポッドキャストからの売上の一部を共有する契約に合意しました。今後は同様の契約を増やす意向です。

 

SpotifyのCEO、Daniel Ekは、音楽からオーディオブック、教育、スポーツ、ニュースにいたるまで幅広くコンテンツを扱う「世界最大のオーディオ会社」を目指すと公言しており、ポッドキャストはその最初の一歩にすぎません。Ekは一部で過剰投資を認めつつも、コンテンツ投資はポッドキャストプラットフォーム最大手に上り詰めるという目標達成に寄与したと評価。同社はポッドキャスト事業の広告売上が今年30%増え、全社売上成長率を上回ると予測しています。

 

同社幹部はSpotifyの将来像について、クリエイターのコンテンツに対して広告を販売し、その売上を共有するYouTubeモデルに近いものになると語っています。クリエイターにSpotifyでポッドキャストを配信してもらい、広告やグッズ販売につなげたい考えです。

 

また、今後は楽曲の選択やリスニング習慣にもとづいてリスナーの嗜好を分析し、ターゲティング広告に生かす方針です。広告主は現在、広告マーケットプレイスの「Spotify Audience Network」を利用し、番組ごとにスポットを購入する代わりに特定のタイプのリスナーに絞って広告を配信することが可能です。

 

Spotify幹部によると、ポッドキャスト分野に参入して4年間のデータをもとに、同社はどのような番組フォーマットがリスナー維持に有効かを把握しているといいます。目標通り黒字化を達成できるのか、Spotifyのポッドキャスト事業の行方が注目されます。