ローカルテレビ局、今年も選挙広告の恩恵

ローカルテレビ局が来週に控えた大統領選挙などでの記録的な政治広告出稿に沸いています。   昨今ローカル市場でもデジタル広告の優勢が伝えられていますが、[…]

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ローカルテレビ局が来週に控えた大統領選挙などでの記録的な政治広告出稿に沸いています。

 

昨今ローカル市場でもデジタル広告の優勢が伝えられていますが、有権者への説得力と効率的な広告バイイングという点で、ローカル放送は依然として有力な媒体です。

 

ストリーミングはニッチな有権者層をターゲットにしやすい一方で、大規模に有権者にアプローチするのはまだスケールが足りません。また、ローカル放送の広告規制により、低コストで広告が購入できたり、誤情報などを理由に広告がブロックされる事態をキャンペーン側が防ぐことができます(政治広告へのバイアスを防ぐためのようです)。

 

ローカルテレビ局は、2年に一度行われる議会選挙と4年に一度行われる大統領選挙の年に広告収入が跳ね上がります。特に今年は、競争の激しい議会選挙や接戦の大統領選挙、さらに州レベルでの住民投票が増加したことにより、ローカル局にとって広告収入が大幅に増加しています。

 

BIA Advisory Servicesによれば、2024年は$11.7B(1兆6380億円)の政治広告がローカル市場で費やされる見込みで、これは2020年から21.3%の増加となります。政治広告はローカル広告市場全体の約6.7%を占めることになります。

 

さらに、ローカル放送局は、今年“デジタル”政治広告として過去最高の$2.2B(3080億円)を売り上げると予想されています。これは、ウェブサイトや自社のストリーミングアプリなどのローカル局のデジタルプラットフォームの広告です。

 

もちろんローカル市場でのCTV広告も急成長をしており、BIAは今年、CTV広告に最低でも$2.6B(3640億円)が費やされると見込んでいます。

 

 

こうした状況で、各ローカル局グループも政治広告の恩恵を受けています。

 

ローカル放送局グループ大手の一つであるE.W. Scrippsは、モンタナ州やオハイオ州の上院選挙や複数の州で話題となっている住民投票のおかげで、2024年のローカル政治広告収入が過去最高水準に達すると見込んでいます。

 

Nexstarでは、第2四半期の政治広告が2020年の同期間と比べて倍増しました。最新の決算説明会でNexstarは、バイデン大統領からハリス副大統領への変更があったこともあり、両党の政治広告出稿を加速させたと分析しています。

 

ただし、いち視聴者としては、政治広告の多さに辟易とする時もあります。ローカル局の場合、広告費が高いキャンペーンがあれば、事前に予約している広告主より優先するという商流があるため、この時期は特に政治広告のオンパレードなります。来週決着の時を迎える選挙ですが、アメリカ人の選択の答えがいよいよ出ます(といっても終わってからも相当揉めそうですが…)。

 

(参考リンク)

https://www.axios.com/2024/10/29/political-ads-boost-local-tv

フロリダ州政府がテレビ局に圧力

フロリダ州での中絶の権利を主張するテレビ広告をめぐり、同州政府がその広告の放送を中止するようにテレビ局に圧力をかけたことが問題となっています。   同[…]

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フロリダ州での中絶の権利を主張するテレビ広告をめぐり、同州政府がその広告の放送を中止するようにテレビ局に圧力をかけたことが問題となっています。

 

同州保健衛生局が州内の各テレビ局に対して「放送を中止しない場合は、テレビ局に対して罰金を課す」という文書を送付していたものです。これに対し、広告の発信元である市民団体Floridians Protecting Freedomは10月16日、「州政府によるテレビ局への圧力・脅迫だ」として、州政府にこの要請を撤回させるよう裁判所に訴えていました。

 

団体の訴えを受けた10月17日、Mark Walker連邦判事がフロリダ州公衆衛生局のJoseph Ladapo長官に対し、合衆国憲法第一条・言論の自由を根拠に、テレビ局への圧力禁止令を発令しました。ただし、この禁止命令は臨時のもので、有効期間は10月29日までとなっています。このFloridians Protecting Freedomの訴えは、フロリダ州保健衛生局とLadapo長官の双方を相手取って起こされたものですが、Walker連邦判事の禁止令はLadapo長官にのみ適用され、州保健衛生局は引き続きこの広告に反対の姿勢を崩していません。

 

Floridians Protecting Freedomは裁判所に対して、臨時の禁止令にとどまらず、州政府が今後もテレビ局を不当に脅さない、不当に罰金や罰則を課したりしないよう、事前に禁止令を発令するよう求めています。

 

この騒動の背景には、今回の選挙でフロリダ州では、中絶の権利をめぐる州法改正案が住民投票にかけられていることがあります。問題のテレビ広告では、脳に悪性腫瘍がある女性が治療を受け延命するために、中絶をしなければならないという実例が取り上げられています。この州法改正案件が通れば、現行のフロリダ州法にある「妊娠6週以降の中絶を禁止する」条例を覆すことができるため、この広告は有権者に対して、この州法改正案件に「イエス」と投票するよう訴えていました。

 

米メディアによると、フロリダ州保健衛生局から州内のテレビ局に送られた文書には、このテレビ広告が虚偽で、危険な内容であることが綴られており、現行州法でも、母体の生死が関わる場合は例外であることを強調しており、さらには、州外で中絶をすることもできると書かれていたそうです。

 

Mark Walker連邦判事は、フロリダ州政府自身もこの中絶の州法改正案件については、独自の反対意見を主張する広告を展開しており、自分たちと逆の立場をとるFloridians Protecting Freedomの広告だけを放送させないようテレビ局に圧力をかけるなど、もはや検閲と同じだと批判しました。

 

Walker連邦判事の判決以前の10月8日の段階で、連邦通信委員会(FCC)のJessica Rosenworcel委員長がフロリダ州政府に対して、「テレビ広告の内容が政府の立場に反するとして、その広告を放送しないように放送局に対して脅迫するなど言語道断。米国憲法第一条・言論の自由に反する非常に危険な行為だ」として、厳しく批判していました。

 

州政府からの“脅迫状”を受けても、ほとんどのテレビ局は広告を放送し続けているそうですが、WINK-TVの1局だけは、放送を中止したそうです。

 

しかしこの騒動はまだ終わっておらず、禁止令はあくまでも臨時で、10月29日に公聴会を経て、州政府に対して、今後テレビ局を不当に脅したり、不当に罰金や罰則を貸したりしないよう裁判所が事前に禁止令を発令するべきかどうかが議論されます。

 

まさにこれから起こりうるトランプ時代を彷彿とさせるようなニュースですが、米国では民主主義の根幹が揺らいでいると感じるのは私だけでしょうか…

 

(参考リンク)

https://www.nbcnews.com/health/health-news/florida-surgeon-general-restraining-order-abortion-ad-tv-stations-rcna176124

TikTok、年末商戦に向けライブショッピングを強化

11月28日のサンクスギビングの祝日から本格化する米国の年末商戦を前に、TikTokはニューヨーク市内でブランドやクリエイターを集めてイベントを開催し、ECプラ[…]

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11月28日のサンクスギビングの祝日から本格化する米国の年末商戦を前に、TikTokはニューヨーク市内でブランドやクリエイターを集めてイベントを開催し、ECプラットフォームとしての価値を訴えライブショッピング機能を強化する方針を示しました。

 

(L) Nico le Bourgeois, head of U.S. operations for TikTok Shop. (R) Products from period care brand August on display at a TikTok event on Oct. 23, 2024, in New York. Photos: Kerry Flynn/Axios

 

TikTokは昨年9月、広告以外の将来の収益源としてEC事業を正式に立ち上げ、TikTokアプリ内で商品を購入・販売できるEC機能の「TikTok Shop」をローンチしました。The Informationによると、TikTok Shopの2024年の米国総売上は$17.5B(2兆4,500億円)に達する勢いで増えています。この売上予測はどの調査会社のデータを引用するかによって差がありますが、ライブストリーミングショッピングは米国で確実に普及しつつあるようです。

 

例えば美容ブランドのCanvas Beautyは、6月にTikTokで行った6時間のライブストリームイベントで$1M(1億4,000万円)を売り上げ、その後も事業は右肩上がりで成長していると報告しています。

 

Axiosなどによると、TikTokはイベントで、年末商戦を盛り上げるためのキャンペーンを発表しています。その1つとして11月13~27日までの期間中、化粧品のBenefit Cosmetics、スポーツドリンクのLiquid I.V.など、TikTokで独占商品を提供するブランドにスポットライトを当て、著名人を迎えて商品をライブで販売する「スーパーライブストリーム」を実施するということです。

 

TikTokは、クリエイター向けにオーディエンス構築やセールスを支援するアフィリエイトアプリとTikTok Shopにフォーカスしたセラー向けのヒントをまとめた電子書籍をすでにリリースしています。さらにサンクスギビング前にはニューヨークとロサンゼルスで、クリエイターとマーチャント間のコラボレーションを推進するマッチメイキング・イベントを開催する計画です。

 

TikTok Shopの米国責任者、Nico Le Bourgeoisによると、同社はここ6カ月、米国の消費者やブランド、エージェンシー、インフルエンサーを対象にライブショッピングの利用や導入の準備を進めてきました。昨年の年末商戦ではマーチャント(ブランド)に割引や無料配送などの特典を提供し、EC機能をまずはテストしてもらうことにフォーカスしたそうですが、今年は一転、11月後半の約2週間はショッピング関連コンテンツが大量に配信されることになるだろうと述べています。

 

既報の通り、TikTokは年末商戦に向けて生成AI自動化広告ソリューションを発表しています。それに続くEC機能の強化で、膨大なユーザーベースを武器に勢いが感じられる同社ですが、安全保障上の脅威を理由に対TikTok包囲網は狭まっており、米国での事業継続に関して不透明な状況は依然として続いています。

 

(参考リンク)

https://www.axios.com/pro/media-deals/2024/10/24/tiktok-live-shopping-black-friday

https://www.modernretail.co/technology/tiktok-shop-is-all-in-on-livestreaming-to-drive-sales-this-holiday-season/

ライブスポーツの視聴方法に変化

ローカルのスポーツ中継に関して、プロスポーツチームが、試合中継をこれまでのRSN(リージョナル・スポーツ・ネットワーク)からアンテナ経由の地上波ローカル放送に切[…]

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ローカルのスポーツ中継に関して、プロスポーツチームが、試合中継をこれまでのRSN(リージョナル・スポーツ・ネットワーク)からアンテナ経由の地上波ローカル放送に切り替え始めています。

 

先日お伝えしたように、MVPDのエコシステムで成り立ってきたRSNは、コードカットとともに経営が厳しくなり、独自の配信サービスを構築したり、他の配信サービスのアドオンチャンネルになるなどのビジネスモデルの変換を迫られています。こうした状況下で、コンテンツホルダーであるプロチームは、RSNではなく、地上波ローカル放送を出口として選択する傾向が出てきています。

 

全米各地で、少なくとも13チーム(その多くはNBAとNHL)がほとんどの試合を地上波で中継しており、視聴者はアンテナ経由で無料視聴できます。NBAのPortland Trail Blazersなどは、アンテナを持たないファンにアンテナを無料提供しているそうです。同時に、ほとんどのチームがリニアとは別に、独自の配信サービスを立ち上げています。これまでのケーブルや衛星経由の契約よりは安価とはいえ、配信サービスは有料です。

 

全米一のアンテナ市場はシカゴで、ほとんどの地元チームの試合がアンテナ経由で見られます。Chicago Sports Networkが、NBAのChicago Bulls、NHLのChicago Blackhawks、MLBのChicago White Soxの試合を地上波放送しています。その他の地域でも、テキサス州ダラスのNBAチームDallas Mavericks、NHLのDallas Stars、ユタ州のNBAチームUtah Jazz、NHL のUtah Hockey Club、フロリダ州のNHLチームFlorida Panthers、ワシントン州のNHLチームSeattle Kraken、アリゾナ州のNBAチームPhoenix Suns、ルイジアナ州のNBAチームNew Orleans Pelicansなどは地上波放送をしています。

 

ローカル放送業界は今、次世代放送規格ATSC 3.0の全米導入を推進中で、すでに全米76%の世帯が受信可能になっていますが、実用化には時間がかかっています。スポーツ中継の地上波復活をうまく活用すれば、ATSC 3.0の実用化も一気に加速するかもしれません。

 

もう一つ、地上波に加えて、FASTチャンネル経由でスポーツ観戦をする人が増えているという報告もあります。放送・配信技術大手Amagiが10月23日に発表した調査結果「13th Amagi Global FAST Report」によると、2024年Q3(7−9月)のFAST視聴は前年同時期比40%増で、ことスポーツ観戦に関しては前年比150%増という結果だったそうです。FASTプラットフォームでのスポーツコンテンツも増えており、前年比65%増です。

 

Amagiは「FASTでのスポーツ視聴がこれだけの急成長を見せているということは、メジャー・スポーツチームやリーグだけでなく、新しいスポーツリーグやマイナースポーツリーグにとって、FASTがいよいよ重要な位置を占めてきていることを示している。視聴者と収入を増やす絶好のチャンネルとなるはずだ」と話しています。

 

Amagiのレポートでは下記も報告されています(Amagiの「13th Amagi Global FAST Report」は参考リンクよりダウンロード可能です)。

 

  • FAST視聴は米国とカナダが突出しており、グローバルでのスポーツFAST視聴の60%を占める。
  • EMEA(欧州・中東・アフリカ)のFAST視聴は前年比4.5倍。そのうちの60%は新チャンネルの追加によるもの。
  • 経営陣がFASTチャンネルを重視している。経営者の1/3が、現在何らかのスポーツコンテンツをFASTで提供しているか、将来的に提供すると答え、もう1/3がライブスポーツをFASTチャンネルに加えたいと答えた。経営者の67%が、FASTのライブスポーツへの広告出稿の関心が高まっていると回答している。

 

(参考リンク)

https://www.axios.com/2024/10/24/tv-antennas-sports-game-channel?

https://www.tvtechnology.com/news/amagi-sports-viewing-spikes-on-fast-channels?

https://www.amagi.com/resources/fast-report

Netflix、AAAゲーム開発から撤退

Netflixがゲーム事業の戦略を見直しです。コンソールやPC向けの高予算・ハイエンドのビデオゲーム、いわゆる「AAA(超大作)タイトル」の開発チームを10月前[…]

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Netflixがゲーム事業の戦略を見直しです。コンソールやPC向けの高予算・ハイエンドのビデオゲーム、いわゆる「AAA(超大作)タイトル」の開発チームを10月前半までに解散しました。複数メディアの報道をNetflixが認めたもので、今後はカジュアルなモバイルゲームの制作に注力するとみられています。

 

Cheyne Gateley/VIP+; Adobe Stock

 

報道によると、Netflixは10月初め、南カリフォルニアに2022年に設立したAAAゲームの制作スタジオ「Team Blue」を閉鎖しました。これにともない約30人を解雇し、開発してきたアクションRPGプロジェクトは中止されたということです。

 

閉鎖したスタジオには、Microsoftの「Halo」、Sonyの「God of War」などの人気フランチャイズ制作で功績があり、NetflixがAAAゲーム開発のために招聘したゲーム業界のベテラン数人も参加していました。

 

Netflixは2021年11月、ストリーミングサービスの既存顧客の維持と新規顧客の獲得を目的にビデオゲーム市場に参入しました。その後、オリジナルタイトル制作のためにNight School、Doss Fightなどゲームスタジオ4社を買収し、自社スタジオを南カリフォルニアとヘルシンキに設立。サードパーティからもタイトルをライセンスするなどしてゲーム事業の構築を進め、これまでにモバイル端末向けカジュアルゲームを中心に100タイトル以上をリリースしています。

 

今夏には、人気ゲーム「Fortnite」の開発で知られるEpic GameでExecutive Vice President of Developmentを務めていたAlain Tascanをゲーム部門のトップに招聘。FacebookとElectronic Arts出身の前任者、Mike Verduは新設したゲームの技術革新に関わる役職に就くトップ人事を発表しました。

 

しかし、調査会社Apptopiaによると、ゲームダウンロードの伸びは2023年末から鈍化しており、Netflixのデイリーアクティブユーザーのうちゲーム利用者はわずか1%程度に留まるなど、当初期待したほどの成果は出ていなかったようです。

 

ビデオゲーム業界はもともと競争が激しいという事情もあり、Electronic Arts、Activision Blizzardといった一握りのレガシー企業が独占してきたことに加え、2022年以降は消費者のゲームコンテンツ支出もほとんど増えておらず、体力が乏しいゲーム開発会社は何万人という従業員を解雇しています。

 

そんな中でNetflixは、開発に数億ドル(数百億円)かかることもあるとされるAAAゲームの自社開発を断念しました。ただし、ゲーム事業のその他オペレーションに変更はなく、今後もゲーム事業の発展にコミットすると報じられています。

 

ストリーミングサービス最大手のNetflixにとって、強みは有力なIPを数多く抱えることです。同社は自社の番組や映画とタイアップしたゲーム制作を推進しており、「Netflix Stories」シリーズとして毎月1本、新作ゲームをリリースするとしています。「Emily in Paris」「Virgin River」などをベースにしたモバイルゲームをすでにローンチしており、「Squid Game」「Rebel Moon」フランチャイズを題材にしたモバイルタイトルのリリースを控えています。

 

Netflixは、当初から疑問の声の多かったゲーム事業のうちハイエンドは手仕舞いということになりました。とはいえまだ諦めたわけではなく、今後はカジュアルゲームで勝負するということのようですね。

 

(参考リンク)

https://www.wsj.com/business/media/netflix-backs-out-of-plan-to-develop-blockbuster-videogame-9e9b75ce?mod=business_feat2_media_pos2

https://variety.com/2024/digital/news/netflix-shuts-video-game-studio-southern-california-1236186359/

 

IAB、インタラクティブ広告の現状を整理

昨今、だいぶCTV広告でもインタラクティブ広告が浸透してきている感じを受けますが、IABは「Connected TV (CTV) Ad Format Lands[…]

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昨今、だいぶCTV広告でもインタラクティブ広告が浸透してきている感じを受けますが、IABは「Connected TV (CTV) Ad Format Landscape: How Standardization Can Drive Programmatic Growth and Innovation」と題したレポートを発表し、CTVのインタラクティブ広告の現状をまとめています。

 

CTV視聴とCTVへの広告出稿が急増する中、CTV広告フォーマットの多様化も進んでいます。レポートの中でIABは、CTVの多様な広告フォーマットや新しい広告フォーマットの概要を説明し、クリエイティブな事例を紹介しています。(参考リンクから実際の広告事例をご覧頂けます)

 

 

一方で、フォーマットの標準化の必要性も強調しており、標準化によるスケールの拡大と効率性の向上がCTV分野での将来的なイノベーションを推進する鍵となるとしています。

 

こうした課題に対処するために、IAB Tech Labは「Ad Format Idol」という取り組みを開始しました。この取り組みは、CTVの新広告フォーマットの標準化を目的としており、業界の関係者は、2023年10月22日から2025年1月22日までに、注目するCTV広告フォーマットを提出することができます。人気のフォーマットは2025年第一四半期に発表されされる予定です。

 

主な調査結果:

 

  • イノベーションは拡大しているが分散している:15の広告フォーマットが40%以上のベンダーに広く受け入れられている。
  • カスタマイズと提携:多くの回答者がカスタムソリューションを提供するか、アドテックパートナーと協力している。
  • イノベーションにプログラマティックの対応が追いつかず:CTV在庫の75%はプログラマティックで購入されているが、インタラクティブフォーマットの92%はダイレクトセールスで取引されている。(顧客サービスの面がまだまだ強いようですね)
  • コマースとの統合:回答者の60%がインタラクティブ広告でショッパブル広告を導入している。

 

(参考リンク)

https://www.iab.com/guidelines/ctv-video-ad-format-landscape-standardization-programmatic-growth-and-innovation/

https://iabtechlab.com/press-releases/iab-tech-lab-launches-ad-format-idol-initiative-to-standardize-emerging-ctv-ad-formats/

Disney、SiriusXMと相互バンドルを提供

DisneyとSiriusXMは自社のストリーミングサービス加入者への6カ月限定プロモーションとして、それぞれのサービスを相互に追加料金なしで提供することに合意[…]

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DisneyとSiriusXMは自社のストリーミングサービス加入者への6カ月限定プロモーションとして、それぞれのサービスを相互に追加料金なしで提供することに合意しました。

 

SiriusXMは、衛星ラジオ大手で音楽ストリーミングサービスやポッドキャストネットワークなどを展開するオーディオエンタメ企業です。この提携により、米国の一部のSiriusXM加入者は、DisneyのESPN+を追加料金なしで最大6カ月利用できるようになります。10月末のプロモーション開始時点でこの特典を利用できるのはPlatinum VIPプラン(月$42.48=5,900円)の加入者のみですが、11月に対象プランが追加される予定です。

 

一方、米国の新規および既存のESPN+加入者は、プロモーション期間中、400以上の広告なし音楽チャンネルを含む、ニュースやエンタメ、コメディなどSiriusXMアプリで聴取可能な全コンテンツライブラリに無料でアクセスできるようになります。

 

ライブスポーツはSiriusXMの強みの一つであり、同社は「プロと大学のライブスポーツイベントをオーディオで提供する最も豊富なラインナップ」を謳い、スポーツにフォーカスした20以上のチャンネルを24時間365日配信しています。

 

6カ月のプロモーション期間終了後、希望者はESPN+(月$11.99=1,700円)またはSiriusXMストリーミング(月$9.99=1,400円から)の通常料金を支払うことでサービスの継続が可能です。両社はスポーツファンに動画とオーディオの両選択肢を示すことで、新規加入者の獲得につなげたい考えです。

 

もう一つDisneyですが、App Storeの手数料支払いをめぐりAppleと袂を分かつことになったと報じられています。

 

報道によると、DisneyはAppleのApp Store経由でのHuluまたはDisney+の新規加入受付を停止しました。Apple経由でDisneyのサブスクサービスを契約した加入者は、Appleから料金請求を受け取り、Appleはこれら加入者が支払う月間料金の最大15%を手数料(30%との報道もある)として徴収しています。DisneyのCEO、Bob Igerは5月、これに苦言を呈し、App Storeでの取り扱いについて見直しを示唆していました。

 

多額の手数料支払い、いわゆる「アップル税」がなくなれば、Disneyはストリーミングサービスの利益率が高まることを期待できます。ただ、DisneyとApple、特にIgerとAppleの共同創業者の故Steve Jobsは長年良好な関係を築いており、DisneyはAppleと決裂するのではなく、これを機に手数料交渉を有利に進めたいと考えているとの見方も一部にはあります。

 

大手ストリーミングプラットフォームではNetflixが2019年、サービス加入希望者を自社ウェブサイトに誘導することにより、Appleへの手数料支払いを回避しています。

 

(参考リンク)

https://espnpressroom.com/us/press-releases/2024/10/espn-and-siriusxm-team-up-to-offer-subscribers-even-more-ways-to-access-the-content-they-love/

https://variety.com/2024/digital/news/siriusxm-espn-plus-free-6-months-special-offer-1236185260/

https://www.yahoo.com/tech/disney-apple-breaking-over-app-190132819.html

https://www.pcmag.com/news/hulu-disney-plus-ditch-ios-apple-app-store-sign-ups

 

Fox、野球中継で新技術を導入

MLBのワールドシリーズ、NYヤンキース対LAドジャースが10月25日から始まりました。テレビ中継はFOXスポーツで、Fox SportsのアプリやFoxSpo[…]

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MLBのワールドシリーズ、NYヤンキース対LAドジャースが10月25日から始まりました。テレビ中継はFOXスポーツで、Fox SportsのアプリやFoxSports.comでも視聴可能です。vMVPDのFuboTVも無料お試しライブ配信を提供しています。

 

ドジャースタジアムで行われた第1戦は、ドジャースが劇的な延長10回サヨナラ満塁打で試合を決めましたが、この試合の平均視聴者数はFox、Fox Deportes、Univision、配信各社を合わせて1520万人となり、過去5年間で最高を記録しました(Nielsen)。昨年のワールドシリーズから62%増となり、第1戦の視聴者数ピークは、延長10回表から試合終了までの1780万人でした。

 

近年スポーツ中継ではさまざまな新技術が導入されています。FOXスポーツも野球中継で、2017年からon-field mics(試合中のインタビューに利用される超小型マイク)を、2019年からはDirt Cams(フィールドの地面に埋蔵されたカメラ)を導入してきました。ピッチャーマウンドとホームプレートの間に埋め込まれたDirt Camsは、バッターを下から見上げる至近距離からの独特の視点を提供しています。

 

そして今年のワールドシリーズでは、新しい「Ump Viewカメラ」が導入されました。

 

 

文字通り「アンパイア視点のカメラ」で(写真上)、FOXスポーツがMLBの合意を得て、主審のマスク上部に埋め込んでいるカメラです。2022年夏のMLBオールスター中継から使用が始まりましたが、今年のワールドシリーズではその改良バージョンがデビュー。バッテリー持続時間が大幅に伸びたことと映像のブレがないことが最大の改良点だそうです。このカメラによって選手のプレーを新しい角度から、より鮮明に映し出すことができるようになりました。

 

従来の野球中継といえば、外野席に中継カメラを設置し、フィールド内ではカメラマンが試合の邪魔にならないように動き回るのが定番でしたが、FOXは「試合を外側と内側の両方からカバーする」として、Dirt Camsやon-field mics、Ump Viewカメラなどの新技術を開発してきました。近年はドローンも野球中継で活躍しており、今回のワールドシリーズでも超小型のHummingbird Drone(写真下)を飛ばしています。試合中は邪魔になるので飛ばさずに、攻守交代の合間にだけ飛ばし、選手たちの様子を捉えています。

 

 

FOXスポーツは、そのほかにも画面上でのさまざまな表示機能の改良に注力しています。バッターボックスに立つ打者ごとに、ストライクゾーン、一球ごとの球速とキャッチャーの捕球位置などで、これらデータの画面表示はFOXスポーツに限った新技術ではありませんが、例えばストライクゾーンの表示については、FOXのそれは他局に比べると、“見えるか見えないか微妙な透明表示”になっており、試合の主役である選手の様子を画面上で邪魔しないよう工夫が凝らされているそうです。ホームプレート背後の壁の広告表示も、壁を必要としない画面上のデジタル広告方式を用いるなど、様々な技術開発に注力しています。

 

ワールドシリーズは、本日からNYヤンキースタジアムで第3戦が始まります。

 

(参考リンク)

https://www.tvtechnology.com/news/fox-sports-aims-to-enhance-world-series-coverage-with-inside-out-perspective?

https://www.nbcnews.com/sports/mlb/game-1-world-series-ratings-rcna177459?

Amazon、AIオーディオ広告生成ツールを導入

Amazonは生成AIを利用してオーディオ広告を制作するセルフサーブ型ツールを開発し、Amazon DSP経由でβ版の提供を開始しました。同社はすでに画像や動画[…]

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Amazonは生成AIを利用してオーディオ広告を制作するセルフサーブ型ツールを開発し、Amazon DSP経由でβ版の提供を開始しました。同社はすでに画像や動画広告生成ツールを提供しており、これにオーディオ広告を追加します。

 

Amazonは毎年恒例の広告関連のカンファレンス「unBoxed」を10月中旬にテキサス州オースティンで開催し、AIオーディオ広告生成ツールもそこで発表されました。画像や動画生成の場合と同様に、オーディオ広告もAmazonの商品詳細ページの情報を基に生成され、広告主は必要に応じてスクリプトを調整するなどしてパフォーマンスを最適化することができます。

 

「unBoxed」では、次のような新製品や技術も発表されています。

 

  • AI Creative Studio

 

Amazon Adsの生成AIツールを一カ所にまとめたツールボックス。あらゆる規模やスキルレベルの広告主のシームレスな広告制作体験をサポートし、Prime Video、Twitch、Amazon.com、Alexa搭載デバイスなど、Amazonのプラットフォームごとにカスタマイズしたキャンペーンをより効率的に構築できるようにするというものです。

 

AI Creative Studio

 

例えば、コーヒーカップの画像に、カップから立ち上る湯気を加えるなどして動画を制作し、さらに音声を加えてオーディオ広告を作るといったことが可能になります。

 

  • 広告のフリークエンシーコントロール

 

数回のクリックでキャンペーンを作成できるなど、ワークフローをシンプルにしたDSPの新UXを発表。初期のテストでは、キャンペーン設定にかかる時間が最大75%短縮されたそうです。

 

新UXの一環で、広告主が世帯レベルでフリークエンシーキャップを設定し、広告インプレッションの重複をなくす機能を追加。初期テストでは、広告主が広告費を最大26%節約できたことが報告されました。

 

  • クリーンルームの「Amazon Marketing Cloud」と「Amazon Publisher Cloud」を連結

 

広告主が使用するクリーンルームの「Amazon Marketing Cloud」と「Amazon Publisher Cloud」を連結し、パブリッシャーはAmazon Publisher Cloudを使用することで、Amazon DSPを使用する広告主とのプログラマティックキャンペーンのアクティベーションが可能になります。パブリッシャーと広告主双方のファーストパーティーデータを使用することで、カスタムオーディエンスの構築が可能となります。

 

ほかにもAmazonは、来年から日本を含む複数の海外市場でPrime Video向けに広告の販売を開始すると発表しました。米国以外ではオーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、英国、メキシコを含む国々ですでに広告を販売しており、新市場はこれらに追加されます。

 

いよいよ日本でもAmazon広告が本格化しそうですね。

 

(参考リンク)

https://advertising.amazon.com/events/unboxed?ref_=a20m_us_nws_upva_evnts_unbxd24

https://www.adweek.com/commerce/amazons-ai-generator-tool-can-now-create-audio-ads/

 

YouTube、AI音楽生成ツールを幅広く提供開始

YouTubeは米国のクリエイターを対象に、テキストプロンプトから短いオーディオクリップを制作するAI音楽生成ツール「Dream Track」の提供を開始しまし[…]

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YouTubeは米国のクリエイターを対象に、テキストプロンプトから短いオーディオクリップを制作するAI音楽生成ツール「Dream Track」の提供を開始しました。短尺動画「YouTube Short」向けの利用を想定しており、AIを用いる音楽制作プロセスに大きな影響を与える可能性があります。

 

Dream TrackはGoogle DeepMindのAI音楽生成モデル「Lyria」を用いて開発したもので、2023年11月に発表されました。

 

YouTubeはDream Track開発にあたり、Charli XCX、 John Legend、Sia、Charlie Puthなど9人の人気レコーディングアーティストと提携しています。Dream Trackのユーザーはこれらアーティストの声を使い、入力したテキストプロンプトからShorts用にオーディオクリップを作成し、最終的に最大30秒のロイヤルティフリーのサウンドトラックを制作することができます。

 

使い方は簡単で、例えば作りたい音楽として「アップビートなバケーショントラック」と入力し、9人のアーティストと「カントリー」「ダンス」「ヒップホップ」などの複数選択肢の中から使いたい声とスタイルを選びます。

 

YouTubeはこれまでDream Trackを少数のアーティストやクリエイターに限定して試験的に提供し、フィードバックを収集して技術の改善を進めてきました。これからは、すべての米国クリエイターがYouTube Shorts用にこれを使って音楽を作れるようになります。ただし、いまのところボーカルの選択肢は用意されておらず、カスタムインストゥルメンタル(楽器だけの音楽)のみを作成できるということです。

 

ロイヤリティフリーの音楽を自由に作れるとなると、YouTubeやそのクリエイターにとっては収益面で大きな改善になります。一方で音楽のクリエイターは収益機会を失うことになりそうですね…

 

(参考リンク)

https://x.com/nealmohan/status/1845890642419085542

https://blog.youtube/inside-youtube/ai-and-music-experiment/

https://www.mediapost.com/publications/article/400280/youtube-brings-ai-audio-generator-to-us-creators.html?edition=136017

https://www.socialmediatoday.com/news/youtube-broader-launch-dream-track-ai-audio-generator/729814/