2024年AI広告失敗例(ADWEEK)

年末が迫り、今年の総括記事が少しずつ出てきていますが、2024年はパリオリンピックにあわせてAIを使用し制作した広告が数多く登場しました。しかし、新技術を使うと[…]

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年末が迫り、今年の総括記事が少しずつ出てきていますが、2024年はパリオリンピックにあわせてAIを使用し制作した広告が数多く登場しました。しかし、新技術を使うという果敢な挑戦こそ評価されても、その多くは「的外れなメッセージ」から「意図しない偏見」、「失職の危機感」までさまざまな理由で非難や反発の対象となりソーシャルで炎上しました。ADWEEKが、Coca-Cola、Google、Netflix など、特に物議を醸した広告やAI施策をまとめています。(各社の広告は文末の「参考リンク」の記事からご覧いただけます)

 

From tone-deaf messaging to unintentional bias, several high-profile AI ad snafus were lambasted.Toys R Us, Apple, Google

 

  • Coca-Cola

 

ブランドを象徴する赤いトラックやトナカイ、ホッキョクグマが登場する1995年のホリデー広告の定番「Holidays Are Coming」をAIで再製して11月にリリースしました。当初の評判は良かったのですが、クリエイティブコミュニティを中心にAI台頭による失職への懸念が表明されたのをきっかけに空気が一変。「(AI広告は)ホリデーの定番から暖かさや喜びを奪い取った」「ホリデーが台無しになった」などの不平不満がソーシャル上に溢れ、人気ブランドなだけに炎上騒ぎも大きくなったことは記憶に新しいです。

 

  • Netflix

 

11月にNetflixで配信された人気アニメシリーズ『Arcane』のプロモーションの一環でポスターを公開。同シリーズは豊かなビジュアルと高い芸術性に定評がありますが、登場キャラクターの手の見え方がおかしいことをファンがXで指摘したのを契機にAI生成画像が使われた疑惑が浮上し、AI使用はアーティストへの冒涜だとしてソーシャルで不満が噴出する事態となりました。Arcaneを制作したRiot Games幹部が自社のAI禁止ポリシーを説明し、問題の画像は間違いであるとして事態の収拾に努め、画像は削除されました。

 

  • Meta

 

広告ではありませんが、AI利用の透明性向上を目指す業界全体の取り組みの一環としてMetaは4月、AIで制作されたコンテンツであることを示す「Made with AI」ラベルをFacebookとInstagramに導入しました。しかし、ラベル付けが不正確であるとして、特に写真家とクリエイティブ関係者から苦情が続出し、一時はクリエイターがMetaプラットフォームをボイコットして反AIを掲げる競合サービスのCaraに乗り換える騒ぎになりました。Mataは7月、当初の方針を見直しラベル付けを変更しています。

 

  • Google

 

GoogleはNBCUのオリンピック番組で「Dear Sydney」と題した60秒の広告をリリースしました。オリンピック選手に手紙を書きたいという娘を手伝おうとした父親が、娘の代わりにGoogleの対話型AI「Gemini」に手紙を書いてもらうというストーリーで、娘の気持ちを無視する無神経な内容だとして放送直後から批判が殺到し、Googleは広告を取り下げました。

 

  • Toys”R”Us

 

創業者の故Charles Lazarusが子供の姿で登場する60秒の広告を生成AIで制作し、6月にリリースしました。詳しくは7月10日付の記事をご覧いただきたいのですが、この広告はLazarus少年がショットによって別人に見えるなど成果物の質がこき下ろされたほか、盗作や無許可のIPで訓練したAIツールを使用したとして、クリエイターたちがソーシャルで非難の声を上げました。

 

  • Levi’s

 

こちらも広告ではありませんが、Levi’sは2023年、ファッションや小売りブランド向けにAIでリアルなアバターを制作するLalaland.aiと提携しました。この発表はソーシャルで炎上し、アバターの代わりになぜもっと多様なモデルを採用しないのかと、Levi’sに非難が集中しました。AI生成モデルの利用は、BIPOC(黒人、先住民、その他有色人種)コミュニティから仕事の機会を奪うことになると警告する声もあったそうです。

 

ソーシャルで炎上というのがどうも難癖に思えて仕方ないのですが、いずれにしてもこうした声を聞くと、AIの実用化にはまだ時間がかかりそうですね…

 

(参考リンク)

https://www.adweek.com/creativity/ai-ad-snafus-so-far/

 

ディープフェイク、今回の選挙では暗躍せず

今年はアメリカや日本だけでなく、ルーマニアやインドなど世界各国で重要な選挙が行われました。世界全人口の実に半数がそうした国々に住んでいるため、生成AIによるフェ[…]

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今年はアメリカや日本だけでなく、ルーマニアやインドなど世界各国で重要な選挙が行われました。世界全人口の実に半数がそうした国々に住んでいるため、生成AIによるフェイク動画や音声など、いわゆる「ディープフェイク」が選挙にもたらす影響・脅威が大きく懸念されていました。

 

ただ、Metaの発表によると、米国も含め、実際にはその脅威は予想をはるかに下回ったということです。ディープフェイクよりもよっぽど深刻で、政府やIT企業が対応に苦心したのが、数々の偽陰謀疑惑だったそうです。

 

 

今年の選挙期間中、ディープフェイクを使った選挙関連の偽情報はいくつか察知されましたが、その数は少なく、偽情報全体の1%に満たなかったということで、「Metaのサービスを通してプラットフォーム上での動向を監視していたが、ディープフェイクの脅威は形になっていない」としています。

 

Metaは今年、一般ユーザーがMeta AIチャットボットを使って無意識・無防備に選挙の誤情報を発信しないように、新たな防御システムを導入しました。政治家の容姿や音声がAIによって偽造されないようにすることもその一つです。Metaによると、選挙期間中にこの新防御システムが拒否した一般ユーザーからのAI利用リクエストは、59万件。これらのリクエストはいずれも、トランプ次期大統領やハリス副大統領、バイデン大統領の容姿をAI生成するためのリクエストでした。

 

Metaはここ数年、プラットフォーム上での偽情報の脅威に対応するため多額を投じてきました。悪意のある偽情報の発信源を見逃さないシステムを構築しているということで、AI使用の有無に関わらず、組織的な誤情報・偽情報拡散ネットワークの探知・対策に役立ったとしています。

 

Axiosによると、現段階では生成AIによる画像や映像はまだまだ精密さに欠けるため、IT防御システムによる察知も比較的容易にできるようです。実際、今日の偽情報・誤情報のほとんどは、画像・映像の場所や撮影時期を故意に変更したりするなど、コンテンツを加工したもので、生成AIによる偽画像や偽映像ではないそうです。ディープフェイクを使った誤情報を組織的に拡散するネットワークは、現段階ではまだ成功していないということのようです。

 

最も脅威となるディープフェイクは権力者によるその悪用だと、Axiosは指摘しています。顕著な例として、一つは、トルコのRecep Tayyip Erdogan大統領がキャンペーンラリーの舞台上で、対抗する候補者がテロリストグループと関係していることを示唆する偽動画を流したこと。もう一つは、トランプ前大統領が選挙期間中、ハリス支持の歌手テイラー・スウィフトとそのファンが、あたかも自分を支持しているかのような偽画像をソーシャルメディアに投稿したことを挙げています。

 

今年の選挙ではディープフェイクは主役となりませんでしたが、今後増大していくだろう脅威にどのように立ち向かっていくのか引き続き大きな課題となりそうです。

 

(参考リンク)

https://www.axios.com/2024/12/03/global-elections-dodge-deepfake-threat?

Walmart、Vizio買収を完了

Walmartは2月に発表したスマートテレビメーカー、Vizioの$2.3B(3,220億円)での買収を完了しました。WalmartはVizioとそのOSでアク[…]

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Walmartは2月に発表したスマートテレビメーカー、Vizioの$2.3B(3,220億円)での買収を完了しました。WalmartはVizioとそのOSでアクティブアカウント数1,800万超の「SmartCast Operating System」を獲得し、広告主と消費者の接点を増やすとともに、同社の米国リテールメディア部門、Walmart Connectの成長を加速させることができると述べています。

 

Walmart announced its purchase of Vizio for more than $2 billion.Walmart

 

ADWEEKは関係者の話をもとに、この取引が広告業界に特に重要な影響を与えるとして、マーケターが知っておくべきこと3点を解説しています。

 

  • 最大の目的はOSデータの取得

 

Walmartが今回の買収で最も欲しかったのがVizioのOSです。これによりWalmartは、ACR データ(Automatic Content Recognition、ディバイスで再生中のコンテンツデータ)を収集し、広告商品を強化することが可能になりました。プログラマティック広告プラットフォームのNexxenは、「ACRデータによって非常に強力なターゲティングが可能になるが、AmazonはVizioほどデータを持っておらず」、結果的にCTV分野でのWalmart Connectの競争力が高まることになると解説しています。

 

リテールメディア各社が独自のクローズドループ・システムの構築を目指すなか、ACRデータの取得は対Amazonでの競争力強化につながります。また、当然ながらWalmartがVizioデータを手中にすることによる影響は、Vizioの視聴データを広告や計測目的で利用している広告主など市場全体に及ぶ可能性があります。

 

  • 世界のCTV広告予算争奪に参戦

 

データ面以外でも、Walmartは小売りとCTVの両分野でより大きなプレイヤーに浮上します。eMarketerは「Walmartが持つ消費者リーチは、Vizioの広告事業を最終的にSamsungやRokuに匹敵するレベルにまで押し上げるかもしれない」と予測。「もしそうなれば、Walmart-Vizioは米国で、また最終的に世界でトップ5のCTV広告販売会社になる可能性がある」とみています。

 

Walmartは世界最大級の小売業者であり、Vizio製テレビの販売を値引きや他社ブランド製品の扱いを減らすなどして増やし、自社広告事業の成長につなげるという手もあります。ただ、そういった行為は反競争的とみなされ、反発を招く可能性もあります。

 

  • リテールメディアとCTVの境界がさらに曖昧に

 

各社が独自のクローズドループ・システムで消費者にリーチしようとする中で、リテールメディアとCTVの距離はますます近くなってきています。アドテク会社Clinchは、「Walmartの巨大なグローバル・フットプリントと膨大なファーストパーティ・データに、CTV/OTTチャンネルの所有権を組み合わせることで、広告主に非常に魅力的なパッケージとオムニチャネルでオーディエンスを大規模にアクティベートする機会を得られるだろう」と分析しています。

 

規模の面でAmazonにはまだ及ばないものの、WalmartはVizio買収によりメディアとエンタメ分野で確実かつ急速に存在感を高めています。

 

多くのメジャメント会社がVizioのACRデータに依拠していますので、ここがどうなるかが一番大きな問題かと思います。もちろんすぐに手を引いたりはしないのでしょうが、長期的にはどうなるかわかりません。ライセンスをしている会社は、買収の正式完了を前に長期契約に踏み切ったところもあるようです。

 

(参考リンク)

https://www.adweek.com/convergent-tv/walmart-vizio-advertisers-should-know/?

Disney、ESPNコンテンツをDisney+に追加

Disneyは12月4日より、ESPNをDisney+に追加しました。ESPN+との配信サービス契約やESPNのケーブル契約がなくても、Disney+契約者がE[…]

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Disneyは12月4日より、ESPNをDisney+に追加しました。ESPN+との配信サービス契約やESPNのケーブル契約がなくても、Disney+契約者がESPNのスポーツ中継(の一部)を見られるようになっています。

 

ESPN on Disney+では、ESPNから厳選されたスポーツライブ中継とオリジナル番組などが配信されるそうです。カレッジフットボール中継の事前番組「College GameDay」やスポーツトーク番組「Pardon the Interruption」なども含まれます。すでにDisneyのバンドル契約(Disney+、Hulu、ESPN+)をしているユーザーの利便性も向上し、プラットフォームを移動することなく、ESPN+をDisney+プラットフォーム内で視聴できるようになっています。

 

ESPNによると、ESPNをDisney+に追加する目的はスポーツ視聴者層の拡大にあるということです。コアのスポーツファンであればすでにESPN+を契約していますが、なんとなくスポーツを見る層にもESPNを見てもらいたいという狙いで、「特にDisney+と契約する幅広い女性層にリーチしたい。また、ESPNを加えることで、Disney+を競合他社のサービスからさらに差別化し、ユーザーにとって離れ難いサービスにすることができる」とコメントしています。配信戦争から頭一つ抜け出すための戦略という位置付けです。

 

また、今回の統合は、バンドル(Disney+、Hulu、ESPN+)契約と2025年秋ローンチ予定の新しいESPN配信サービスにユーザーを勧誘する戦略でもあります。Disney+内のESPNコンテンツはあくまでも“厳選コンテンツ”で、全コンテンツではありません。ESPN on Disney+を体験したユーザーがもっとESPNを見たければ“バンドルプランか新ESPN配信サービスと契約しましょう”というわけです。

 

さて、この夏大幅値上げを敢行したDisney+ですが、ブラックフライデーから12月2日まで新規加入者を対象に、今度は大幅値下げキャンペーンを展開しました。HuluとDisney+(広告入り)を通常の月$11(1540円)から期間限定で$3(420円)に、Hulu(広告入り)を通常の月$10(1400円)から$1(140円)に大幅値引き。そして、このキャンペーンが終わったタイミングでESPNのDisney+への追加と、ホリデーシーズンでの加入者獲得に力を入れています。

 

 

ちなみに、MAXやParamount+、Peacockなどもホリデー向けに大幅割引料金をオファーしています。昨年のブラックフライデーセールでも同様の値下げキャンペーンを行い、Paramount+が新規契約者180万人、Huluが同170万人など、主なストリーミングサービス全体で前年比82%増・合計690万人を獲得したということで、各社がホリデーシーズンに向けた新規獲得競争を繰り広げています。

 

確かにクリスマスから年末年始は時間があるので、そこでストリーミングを楽しむ人は増えるのでしょうね。問題はそこからどれだけユーザーに自社サービスを継続させるかですが、その点でスポーツコンテンツは大きな力を発揮するのだと思います。

 

(参考リンク)

https://variety.com/2024/tv/news/espn-disney-avaiable-streaming-wars-bundle-1236234400/

https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-11-27/disney-max-offer-holiday-discounts-after-summer-of-price-hikes?

AI導入でエージェンシーの報酬モデルに変化

広告エージェンシーの業務は、AI導入により効率化が進むと予測されています。それを受けてエージェンシーからクライアントであるマーケターへの費用請求について、一部エ[…]

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広告エージェンシーの業務は、AI導入により効率化が進むと予測されています。それを受けてエージェンシーからクライアントであるマーケターへの費用請求について、一部エージェンシーが従来の作業時間ベースからアウトカムベースへの移行を図っていると、WSJが報じています。

 

Artificial intelligence is reducing the number of people, hours and roles required to deliver certain tasks for marketer clients. Illustration: Thomas R. Lechleiter/WSJ

 

広告・マーケティング業界でもAIは幅広い用途で導入が始まっており、例えばエージェンシーが従来担ってきたクリエイティブ分野では、マーケター向けにカスタマイズされる画像の制作と調整といった手作業中心の時間のかかる作業がAIによって迅速化されてきています。コピーライターの仕事も、かつては50通りのコピーを書くのに数時間必要だったのが、今ではAIを利用し100のバリエーションを即座に作成して編集することが可能です。

 

報酬モデル見直しの背景にあるのは、エージェンシーにとってAIの応用が進めばそれだけ、従来の人数や作業時間ベースの料金設定では成果物に対する正当な対価が得られなくなるという懸念です。加えて、クリエイティブキャンペーンの戦略的インサイト分析や企画など、作業時間数では測れない価値をどう請求するかという、AI登場以前からの課題があります。

 

そこで、一部のエージェンシーとそのクライアントが検討しているのが、作業時間がどれくらいかかったかに関係なく、エージェンシーの成果物や計測可能な結果に基づく料金体系への移行です。

 

もちろん、マーケターにとっては、AIによってエージェンシーサイドの作業時間が減れば、従来の作業時間ベースの報酬モデルの方が有利との見方もあります。一方、新報酬モデル推進派の主張は、新モデルはエージェンシーにとって、成果物の質の向上を促す、より好ましいインセンティブを提供するというものです。さらに、エージェンシーサイドでAI活用が進めば、それだけマーケターもAIの可能性を享受できるという意見もあります。

 

S4 Capital傘下でマーテク会社のMonksは、General Motors、Meta Platforms、Googleなどのクライアントと協力し、作業時間数の代わりにアウトプットまたはアウトカムにフォーカスした報酬モデルの開発に取り組んでいます。例えば、ある地域であるブランドのソーシャルメディアを運営してほしいというクライアントがいれば、一定の料金でそれを引き受け、事前に決めた投稿数と計測可能な目標の達成を約束するというモデルです。

 

Monkによると、この報酬モデルは料金が最初から決まっており期待した成果も得られるとあって、同社の新規クライアントに好評ですが、既存のクライアントの間では変化への抵抗感が根強く残っているそうです。

 

新報酬モデルへの移行はいまだごく初期段階であり、PwC U.S.の幹部は、業界内に変化に慎重な姿勢があると指摘しています。一言でアウトカムベースの支払いといっても「変数」が多く、それゆえにリスクも多いからです。しかし、大手エージェンシーホールディング会社のWPPが今年初め、AIの利用はアウトプットとリターンベースの価格設定モデル移行の後押しになると述べるなど、変化は確実に起こりつつあるようです。

 

(参考リンク)

https://www.wsj.com/articles/ai-saves-ad-agencies-a-lot-of-time-should-they-still-charge-by-the-hour-822ce520

 

Omnicom、Interpublic Groupを買収

OmnicomがInterpublic Group(IPG)を買収です。WSJが日曜日に両社の合併話が進んでいると報じて以来、業界は週末もこの話題で持ちきりとな[…]

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OmnicomがInterpublic Group(IPG)を買収です。WSJが日曜日に両社の合併話が進んでいると報じて以来、業界は週末もこの話題で持ちきりとなっていました。週明けの12/9(月)になって、両社は正式に買収について発表しました。

 

Omnicomは傘下にTBWA、 BBDO、 FleishmanHillard、Omnicom Media Groupなどを持ち、IPGはWeber Shandwick、McCann、 FCB、Magna、 Mediabrandsなどを抱えており、クライアントにはAmazon、AT&T、PepsiCo、Unilever、Volkswagenなどが名を連ねます。買収により誕生する新たなホールディングスの売上は、$20B(3兆円)を超える見込みです。世界第3位と第4位の合併で、WPPを抜き、業界のトップに躍り出ます。

 

両社は今回の買収により市場での競争力を高め、従来のエージェンシー領域での競争に加え、GoogleやMetaといった新たな競合にテックやAIといった分野で伍していくためとしています。

 

OmnicomのChairman & Chief ExecutiveであるJohn Wrenは「急速に変化する環境下で自分たちの将来を自分たちで決めるための買収」と述べ、「両社の文化や価値観は近く、テックやデータに傾倒している点も近い」と将来への期待を示しました。

 

買収は、株式交換による取引で、IPG1株につきOmnicom0.344株が割り当てられ、Omnicomの株主は、新会社の60.6%を保有することになります。買収により、2年間で$750M(1125億円)のコスト削減が見込めるとしており、オフィスやテック、サービスセンターの分野でシナジーがあるとしています。両社の合併の発表を受けて、IPGの株価は7%上昇し、Omnicomは8.7%下落しました。

 

両社はともにメディアバイイングでシェアを保つため、政府の調査対象になる可能性はありますが、2025年下半期の取引完了を目指すとしています。合併後の会社名はOmnicomとなる予定で、人事はWSJによると下記となるようです。

 

  • John Wren (Omnicom CEO): Chairman & Chief executive
  • Philip Angelastro (Omnicom Chief financial officer): Chief financial officer
  • Phillippe Krakowsky (IPG CEO): co-president and chief operating officer
  • Daryl Simm (Omnicom COO): co-president and chief operating officer
  • Phillippe Krakowsky を含むIPGの3人の取締役は、そのままOmnicomの取締役に加入

 

「エージェンシーがキャッチーな広告を作るクリエイティブエージェンシーが主流だった時代は過ぎ、過去10年間でテック、データ、eコマース分野のアセットを買収することで、広告主の新しいサービスへの需要に対してテック大手やAccentureなどのコンサルとの新しい競争に対応してきた」とWSJは今回の買収の背景を分析しています。

 

エージェンシーホールディングスの中ではPublicis Groupeがここ最近は好調で、SapientやEpsilonの買収をうまく活かし投資家からの評価を受けていました。OmnicomもFlywheelを買収、IPGはAcxiomを買収し、こうした分野を強化していました。

 

(参考リンク)

https://www.omnicomgroup.com/newsroom/

https://investors.interpublic.com/news-releases/news-release-details/omnicom-acquire-interpublic-group-create-premier-marketing-and

https://www.wsj.com/business/media/omnicom-to-acquire-interpublic-group-in-deal-that-will-reshape-advertising-industry-eed6f1b3

https://variety.com/2024/tv/news/omnicom-interpublic-merger-advertising-industry-tech-ai-future-1236243209/

NBCU、ショッパブル広告でWalmartと提携

NBCUとWalmartはリニアとPeacockを対象に、人気のライブスポーツ番組にショッパブル広告とアウトカム計測機能を提供することで提携しました。11月最終[…]

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NBCUとWalmartはリニアとPeacockを対象に、人気のライブスポーツ番組にショッパブル広告とアウトカム計測機能を提供することで提携しました。11月最終木曜日のサンクスギビングに行われた毎年恒例のNFL試合中継と配信を皮切りに、その他ライブスポーツ番組でも導入される予定です。

 

Walmart will run a two-minute version from its “Deals of Desire” holiday campaign as part of a linear and streaming shoppable ad partnership with NBCUniversal during its Thanksgiving evening NFL telecast.
Credit: NBCU

 

仕組みは簡単で、サンクスギビングの中継のCM中に画面に表示されるQRコードをスキャンしてWalmart.comにアクセスし、ホリデーシーズン限定のお買い得商品やパッケージ商品などを簡単に購入できる仕組みです。Walmart自体もスポンサーとなっており、ブラックフライデーのディールに関する2分間のセグメントも流れました。

 

この機能を活用した広告主は、Walmartのリテールメディア広告プラットフォーム、Walmart Connectのショッパーデータを活用し、広告が実際に売上に与えた影響をクローズドループ計測で把握できます。Walmart Connectのリテールメディアデータがリニアとストリーミングサービスのセールスアトリビューション分析に利用されるのは、今回が初めてということです。

 

提携の目的の1つとして、ブランド認知からセールスアトリビューションまで、フルファネル・パフォーマンスをテレビがいかに提供できるかを広告主に示すことを挙げています。

 

NBCUはInstacart、Albertsons Media Collectiveなどのリテールメディアプレイヤーとも提携を進めており、Walmartとの提携もその一環です。NBCUにとってWalmartは、Peacockコンテンツに出てきた商品を視聴者が購入できるようにする新広告フォーマット「Must Shop TV」のローンチパートナーでもありました。Walmart Connectもメディアとの提携には積極的で、スポーツ関連ではParamount、UnileverとSECおよびBig Tenカレッジフットボール中継へのショッパブル広告導入で提携しています。

 

また、NBCUはPeacockとNBCのホリデー特別番組「Christmas in Rockefeller Center」で、「Virtual Concessions」を提供する予定です。これは大きな試合中継やビンジ視聴に備える視聴者に、QRコード経由で飲食物などの注文を促すインタラクティブ広告(バーチャルのキオスクのようなもの)で、NBCUは今夏のパリ五輪中継で導入していました。

 

ショッパブルはこれまでもCTVで広く提供されていますが、スポーツ&ホリデーシーズンで活用することでその効果拡大を狙っているということのようです。Amazonが一社で実現しているソリューションを、リテールメディアとメディアとの提携で実現しているという形ですが、ホリデーシーズン後の結果に注目したいですね。

 

(参考リンク)

https://together.nbcuni.com/insights/news/nbcuniversal-and-walmart-launch-new-shoppable-experiences-in-live-sports-across-linear-and-streaming-ad-inventory/

https://www.streamtvinsider.com/advertising/nbcuniversal-walmart-expand-shoppable-elements-live-sports-nbc-peacock

https://adage.com/article/media/walmart-nbcu-bring-shoppable-ads-outcomes-measurement-live-sports/2593776

https://together.nbcuni.com/insights/news/nbcuniversals-beloved-holiday-programming-provides-marketers-an-iconic-home-for-the-holidays-with-first-ever-shoppable-experiences-and-unmatched-cross-platform-reach-in-english-and-spanish/#

 

Amazon、ブラックフライデーのNFL中継

Amazonは、11月29日のブラックフライデーに昨年に続きNFL中継を行いました。Kansas City Chiefsが19対17でLas Vegas Rai[…]

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Amazonは、11月29日のブラックフライデーに昨年に続きNFL中継を行いました。Kansas City Chiefsが19対17でLas Vegas Raidersを下したこの試合の平均視聴者数は1351万人となり、昨年の960万人から41%増となりました(Neilsen)。ピーク時(米東部時間午後6時)には視聴者数は1743万人に達しました。

 

Amazonが毎週中継している「Thursday Night Football」のシーズン平均視聴者数は1325万人で、ブラックフライデーゲームはそれを少し上回りました。前日のサンクスギビングのNFL3試合の平均は3420万人(CBS、Fox、NBCが1試合ずつ中継)でしたので、それには遠く及びませんが、Amazonにとっては満足のいく結果となりました。

 

 

ブラックフライデーは、サンクスギビングからクリスマスまで続くホリデーショッピング・シーズンの開幕日となります。近年ホリデーショッピングでもオンラインのセールスが急増しており、Eコマース最大手のAmazonにとってブラックフライデーの試合配信は広告面でもこの上ないメリットです。NFLブラックフライデーの試合は地上波・ケーブルでは中継されず、Amazon Primeの独占ライブ配信で、Amazonは試合中継を売りに30日間の無料お試し期間を設け、Primeメンバーの新規獲得にも乗り出していました。

 

広告のエンゲージメント指標を提供するEDOによると、ブラックフライデーのNFL視聴者の多くは、レギュラーシーズンやサンクスギビングのゲームに比べると、圧倒的に“普段はNFLを見ない層”だということです。昨年のAmazon Primeブラックフライデーゲームの視聴者の4分の1が「Thursday Night Football」を一度も見たことがなく、同3分の1が前日のサンクスギビングのゲームも見ていませんでした。アメフトファン以外の幅広い層にリーチするには絶好の機会というわけです。

 

しかも、ブラックフライデーゲームでのインタラクティブ広告のエンゲージメントは、レギュラーシーズンのそれを250%上回るというデータもあります。試合中のCM画面に映し出されるQRコードからのウェブサイトに飛ぶ確率もレギュラーシーズンのそれを350%上回るそうです。また、サンクスギビングゲームよりもブラックフライデーゲームの方が、試合中に流れた広告ブランドが検索される確率が90%高いということです。

 

こうしたデータに後押しされ、Amazonは今年のNFLブラックフライデーの広告枠を8月には完売していました。そのうちの40%が初出稿ブランドです。価格は30秒枠が$650,000(9100万円)〜$750,000(1億円)だとされます。Amazonが力を入れたのは、Eコマースサイトと連動したショッパブル広告で、プリゲームショー、各クオーター、ハーフタイム、ポストゲームの7枠で、7ブランド(Lego、Ray-Ban/Meta、Google、Microsoft、Ralph Lauren、Yeti、Amazon)の「期間限定大特価」キャンペーンが実施されました。いずれもQRコードもしくはリモートコントロール経由で、AmazonのEコマースサイトに直結するというものです。(別記事のNBCUとWalmartの提携はまさにこれと同じ効果を狙ったものです)

 

ブラックフライデーは、視聴者が積極的にディールを探しているという状態なので、QRコードなどの活用がいつもより高いのには頷けます。ホリデーシーズンのスポーツイベントでは、ショッパブル広告は機能するかもしれませんね。

 

(参考リンク)

https://deadline.com/2024/12/chiefs-raiders-ratings-black-friday-prime-video-1236193173/

https://variety.com/2024/shopping/news/how-to-watch-black-friday-football-online-1236225867/

https://www.sportico.com/business/media/2024/nfl-amazon-black-friday-commericial-ad-cost-1234817640/

https://www.adweek.com/convergent-tv/brands-amazon-black-friday-nfl-game/

ポッドキャスト、ビジュアルメディア化が加速

ポッドキャストの「オーディオメディア」から「ビジュアルメディア」への進化が起きています。ポッドキャスト動画はオーディエンスを拡大し、ブランドにとって消費者とつな[…]

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ポッドキャストの「オーディオメディア」から「ビジュアルメディア」への進化が起きています。ポッドキャスト動画はオーディエンスを拡大し、ブランドにとって消費者とつながる新たなチャンネルとなっています。

 

The Joe Rogan Experience racked up 606% more minutes watched on social media in October compared to January.agrobacter/Getty Images, South_agency/Getty Images

 

ADWEEKによると、ビジュアルメディア化に勢いをつけたのは11月に行われた大統領選挙で、Trump次期大統領の勝利は、ポッドキャストなど新メディアを重視するキャンペーン戦略の成功が一因と指摘されます。ソーシャル動画調査会社Tubular Labsの調べでは、例えば人気ポッドキャスト番組「The Joe Rogan Experience」の場合、1月のFacebookとYouTubeでの動画視聴時間は約1億7,500万分でしたが、Trumpと副大統領候補(当時)のJD Vanceをゲストに迎えた10月は606%増の12億分以上に急増したそうです。

 

Roganほどの勢いはありませんが、政治番組の「Pod Save America」「The Charlie Kirk Show」「The Tucker Carlson Show」も、年初から10月までに動画視聴時間が大幅に増加しています。Tubular Labsの親会社、Chartbeatの幹部は、11月の選挙までのポッドキャスト動画の視聴者数と視聴時間数の伸びについて、消費者が政治ニュースや解説を得る方法の明確な転換点になった可能性があると分析しています。

 

Spotifyも動画対応を進めており、同社は11月初め、自社プラットフォームで動画を毎月公開しているクリエイターの数が、2023年と比較して約50%増加したと発表しました。同社は現在30万本以上の動画ポッドキャスト番組をホストしており、2023年6月の10万から3倍に増えたことになります。

 

動画への移行は、新たな収入源を確保するという事業者側の事情以上に、消費者主導で進んでいるとの見方もあります。データ解析会社のMorning Consultによると、動画ありのポッドキャストを好んで聞くと答えた米国成人の割合は、2022年の32%から現在は42%まで増えており、この傾向は若者に限らず幅広い世代でみられるそうです。

 

前出のChartbeat幹部は消費者行動の変化の主な理由として、動画の方が番組に集中しやすく話し手の表情がわかること、字幕やクローズドキャプションを利用できることなどを挙げています。2024年はポッドキャストが消費者に影響力のあるメディアとして台頭した年でしたが、これに動画が加わることで、リスナーとのよりパーソナルなつながりを期待できるとしています。

 

こうなってくるとポッドキャストとインタビュー動画などとの境界線はかなりなくなっていきますね。Spotifyの対YouTube戦略を以前取り上げましたが、ビデオポッドキャストの分野ではまさに競合になってくるわけですね。

 

(参考リンク)

https://www.adweek.com/media/podcasts-are-increasingly-a-visual-medium/

Tubi、TikTok風のコンテンツ紹介機能を追加

FOXのFASTサービスTubiがローンチした「Scenes」というモバイルアプリ向けコンテンツ紹介機能が注目されています。プレビュー画像としてのサムネイルを超[…]

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FOXのFASTサービスTubiがローンチした「Scenes」というモバイルアプリ向けコンテンツ紹介機能が注目されています。プレビュー画像としてのサムネイルを超えた、TikTokスタイルの映像コンテンツ紹介ツールです。

 

 

Tubiのアクティブユーザーは8100万人以上で、オリジナルタイトルも300以上、ライブチャンネル群に加えて映画・テレビ番組のエピソードは25万以上に上ります。「Scenes」は、これら全コンテンツの60〜90秒の短いビデオクリップを流す機能で、ユーザーが見たいコンテンツを決めやすいよう工夫されています。このビデオクリップからすぐにコンテンツ視聴することもできますし、「ウォッチリスト」に保存しておき、後で見ることもできます。もしくは、「Like」を押しておけば、アプリのカスタマイズ機能の向上にも役立ちます。

 

「Scenes」を使えば、ユーザーはちょうどTiktokのビデオを見ているように、次から次へとショートビデオを見続けることもできます。スワイプすることでコンテンツを変えられるので、ソーシャルに近い操作性です。ユーザーが慣れた方法で簡単にコンテンツを知れるようにし、ユーザーにTubiの巨大なライブラリーから見たいコンテンツを探し出してもらうことが狙いです。

 

コンテンツのショートビデオは、AIによるマシンラーニングツールとTubiのキュレーターチームのコラボレーションで制作しています。ユーザーが「Scenes」を使い、コンテンツの”物色”をして、視聴したり、ウォッチリストに保存したり、または「Like」ボタンを押すことで、AIはさらにそのユーザーの嗜好を学び、紹介機能を向上させていくとしています。

 

実際に使ってみましたが、非常に使いやすくUIも秀逸でした。今後動画サービスのモバイルアプリで流行るかもしれませんね。

 

(参考リンク)

https://www.cnet.com/tech/services-and-software/tubis-new-app-feature-lets-you-go-beyond-a-thumbnail-to-find-something-to-watch/