カナダ政府が2023年夏に立法した「オンラインストリーミング法(C-11)」が、2024―25年の放送年度から施行されます。この6月にはカナダ政府が、米国の配信プラットフォーム各社に対し、カナダでの売上の5%を政府に収めるよう要求しました。徴収開始は今年9月1日からです。CRTC(Canadian Radio-television and Telecommunications Commission、ラジオテレビ通信委員会)の会長兼CEO・Vicky Eatridesは「これで、カナダで事業展開する海外配信サービス各社は、カナダと先住民コンテンツに対して有意義な貢献をすることができる」と話しています。
「オンラインストリーミング法(C-11)」は、カナダの「放送法(Broadcasting Act)」の改訂版です。NetflixやSpotify、Disney+など海外の大手配信プラットフォームを「別種の放送事業」とみなし、これらをカナダの放送・通信事業者を規制する政府機関・CRTCの監督下に置き、放送法の規制対象とするというものです。これによって海外の配信プラットフォームから、カナダ国内での売上の5%を政府が徴収し、それをカナダの地元放送局や国産コンテンツ制作を支援する費用に充てていきます。カナダ政府の見積もりでは、年間$C200M(約$146M=204億円)を調達し、地元メディアに還元するとのことです。
CRTCによると、徴収額は地元放送局(ラジオ、テレビのローカルニュース局など)の運営費や、フランス語/先住民/公用語による少数派コミュニティーのコンテンツ制作を支援するために配分・充当されるとのことです。また、配信プラットフォームは拠出額の一部を、政府への支払いとしてではなく、カナダのテレビ番組支援などに直接支払うことも可能だとしています。
「オンラインストリーミング法(C-11)」が適用されるのは、カナダ国内で年間$C25M(約$18M=25億円)以上の収益を上げている配信プラットフォームに対してのみです。それ以下の小規模プラットフォームは適用外です。他に適用外となるのは、オーディオブックやポッドキャスト、ゲームストリーミングサービス、ユーザー生成コンテンツ(YouTubeなど)です。
規制当局は念願叶ったりですが、カナダの制作スタジオや映画業界団体Motion Picture Association – Canadaは、この新法施行に反対姿勢を呈しています。「何十年も前にケーブルテレビ向けに制定された規制を、現代の配信業界に押し付けるもの」であり、時代遅れかつ差別的だと、批判の声を上げています。Motion Picture Association – Canada の代表Wendy Nossは「これでは世界の配信サービスとカナダのクリエイティブとの共同作業が難しくなり、カナダが世界から取り残される恐れがある。カナダ国内で制作される世界レベルのコンテンツへの投資も難しくなる」と批判しています。
米国発のストリーミングサービスは資本力が大きいので、何もしなければ国内のローカル放送産業が衰退する恐れを危惧しての法律かと思います。ユーロでも規制の網は狭まっており、日本でもそろそろ規制の機運が出てくる頃でしょうか。
(参考リンク)
https://www.hollywoodreporter.com/business/business-news/u-s-streamers-canadian-revenues-1235914777/