Disneyでは、Bob Iger CEOの任期満了が迫るなか、長年の懸案であった後継者選びが最終段階へと進んでいます。振り返れば、Igerは2005年にMichael Eisnerの後任としてCEOに就任して以降、5回にわたり引退予定を延期し、その過程で複数の有力後継候補が社内政治の影響で離脱するなど、後継問題は常に混乱を伴ってきました。2020年にCEOとなったBob Chapekも、2022年にはIger自身の電撃復帰により退任することとなり、Disneyのsuccessionは長く安定しない状況が続いてきました。
こうした反省を背景にDisneyの取締役会は「混乱のないプロセスづくり」を最重要テーマに掲げています。2026年初頭には新CEOを発表する予定であり、正式な就任前には一定期間Igerと並走し、スムーズな引き継ぎを行う計画です。また、主要幹部の離脱を防ぐため、法務・財務・広報・人事の責任者については契約を2027〜2029年まで延長。主要事業部のトップについても契約更新を協議し、組織の安定性を確保しようとしています。
今回のプロセスの特徴は、過去のようなサプライズ指名ではなく、慎重で透明性の高い選考が行われている点です。取締役会メンバーのCarolyn Eversonは、「徹底したプロセスを実施することで、最終判断の正当性と納得感を高められる」と述べています。Disneyは長期的な経営移行を見据え、信頼性の高い手続きによる後継者選びを進めています。
有力候補として名前が挙がるのは、Experiences部門を統括するJosh D’Amaroと、Disney Entertainment共同会長のDana Waldenです。D’Amaroはテーマパーク、コンシューマー商品、クルーズ、ゲームなどDisney最大規模のユニットを率い、ブランドの象徴ともいえる存在感を持っています。一方、Waldenはテレビ・ストリーミング領域の最も経験豊富なクリエイティブ型リーダーで、プラットフォームとの交渉やタレントマネジメントなど、繊細な関係調整で実績を積んでいます。なお、取締役会は一時外部候補も検討したものの、最終的には内部昇格が最有力とみられています。
次期CEOが直面する課題は極めて大きく、多岐にわたります。まず、Disneyはテーマパークにおいて$60B（約9兆円）規模の拡張計画を進めており、これは今後数十年の成長の要となる巨大プロジェクトです。また、激しい競争環境にあるストリーミング事業の収益化、低迷するMarvelフランチャイズの再活性化、そしてコードカッティングによるテレビビジネス縮小への対応など、構造的課題が山積しています。Igerは2024年以降、ブランド再定義や組織刷新を進めてきましたが、これを中長期の成長戦略として定着させられるかどうかは、次期CEOの手腕にかかっています。
一方、WBD買収で世間を騒がせているParamountでも広告部門のトップが交代します。同社で18年間広告事業を率いてきたJohn Halleyが退任し、2026年3月まで戦略アドバイザーとして移行期間を支える形になります。Halleyは、数十億ドル規模のプレミアム動画広告マーケットプレイス「EyeQ」を立ち上げ、業界の代替カレンシー推進の中心人物として活躍してきました。また、ParamountがUpfront Weekから撤退し、個別のクライアントプレゼンへ移行するという戦略転換も主導し、広告主からの評価も高かったと言います。
Paramountは現在、$8B（約¥1.2兆円）規模のSkydanceとの合併プロセスが進んでいますが、Halleyは直近、「広告主との関係は安定しており、所有構造の変化に関係なく広告ビジネスは通常運転である」と述べています。今回の退任は戦略的な世代交代であり、Roku出身のJay AskinasiをCROとして迎えたことと合わせ、広告収益モデルの再強化に向けた布石とみられます。（NBCUのPresidnet,Advertising and PartnershipsのAlison LevinもRokuですし、元Rokuが増えてきましたね）
WBDの買収でもどちらに転んでも大きな人事があることは間違いないので、ストリーミングに時代に合わせた業界の新陳代謝が進みそうです。
（参考リンク）
https://www.wsj.com/business/media/disney-bob-iger-next-ceo-f571257c
https://www.adweek.com/convergent-tv/paramount-ad-sales-chief-john-halley-exiting/