一昔前、アメリカの子供と親にとってのアイドル的存在といえば「Mr. Rogers」。Shari Lewisの「Lamb Chop」や、日本でもお馴染みの「セサミ[…]
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一昔前、アメリカの子供と親にとってのアイドル的存在といえば「Mr. Rogers」。Shari Lewisの「Lamb Chop」や、日本でもお馴染みの「セサミストリート」も然りです。こうした人気を支えていたのはテレビであり、公共放送局PBSや子供向けケーブルチャンネルNickelodeonでした。
今、3歳以下の子供とその親の間で凄まじい人気となっているのが「Ms. Rachel」、YouTuberです。YouTubeの視聴がモバイルからテレビの大画面へとシフトしたことが、Ms. Rachelを乳幼児の間でのスーパースターに育てた要因の一つだとNYTが伝えています。
子育て世代以外にはピンとこないかもしれませんが、NYTの言葉を借りれば「Ms. Rachelはキッズ・コミュニティーのテイラー・スウィフト」。最近は、Sesame Workshopとのコラボレーションで「セサミストリート」のElmoとAbby Cadabbyとも共演。また、ポップスターJohn Legendからのラブコールで共演し、Legendがその動画を自分のInstagramアカウントに投稿。「僕の子供にとってMs. Rachelはかけがえのない存在なんだ」と発信をしているほどです。
今年のホリデーシーズンには、その人気に着目したおもちゃ会社Spin Masterが、Ms. Rachelブランドのおもちゃを発売しています。Target、Walmart、Amazonによると、実店舗、Eコマースサイトともに、購入待ちがでるほどの売れ行きだそうです。病気の子供たちの願いを叶える慈善団体「Make-a-Wish Foundation」には、「Ms. Rachelに会いたい」というリクエストが数多く寄せられ、2023年からMs. Rachelは6回に亘りそうした要望に応えているそうです。
Ms. Rachelは、本名Rachel Accurso(41歳)。夫Aron(45歳)とともに、3歳以下の幼児とその親向けにペアレンティングのYouTubeチャンネルをニューヨークの自宅から配信しています。夫のAronも「Mr. Aron」として子供たちに親しまれています。もともとは、Accurso夫妻の子供に発語障害があり、あらゆる支援を得てもまだ足りなかったことから、「自分たちで何とかしよう」と一念発起。どのように子供に話しかければ発語を促すのかを研究・模索し、育児をする親とその子供たちを支援したいという思いで、2019年にYouTubeチャンネルを始めたそうです。ちなみに夫妻の子供は、努力の甲斐あっておしゃべりマシンと化しているそうです。
二人の動画第1号は、2019年2月13日に投稿した「Bubble, Bubble Pop! Fun circle time song for kids!」で、延べ再生回数は950万回。それ以降配信した動画は全て再生回数1億回を超えるそうです。「YouTubeのリーチがこれほどとは想像していなかった」ということですが、2024年にはサブスクライバー数1200万人を達成しています。もちろんこれ以上のサブスクライバー数を持つキッズ関連チャンネルは他にもありますが、YouTubeによると、Ms. Rachelはテレビ画面上での再生回数がダントツだということです。
Ms. Rachelの動画の一つ「First Words, Songs and Nursery Rhymes for Babies」(参考リンクを参照)は延べ再生回数10億回。YouTubeによると、これだけの再生回数を叩き出せるのは通常、プロのミュージックビデオに限られるということで、他に10億回の再生回数を達成したのは、2012年の2012 K-popクラシック「Gangnam Style」と聞けばその凄さが分かるかと思います。
二人のバックグラウンドを知ると、この大成功もうなずけます。Ms. RachelはNYUで乳幼児向け音楽教育修士号を取得しており、幼稚園から小学校2年生までを教えていた経験があります。そして、Mr. Aronはピアニストで、長年ブロードウェイの音楽監督として、「Sister Act」や「Aladdin」などを手掛けた人物です。つまりこのYouTubeチャンネルは、乳幼児教育のプロと音楽のプロが立ち上げた「ハイレベルな乳幼児発達支援プログラム」というわけです。しかも、Mr. Aronのブロードウェイ時代の友人が続々とプログラムにゲスト出演し、そのレベルはまさにブロードウェイ。子供たちが夢中になって、テレビ画面からのMs. Rachelの問いかけや歌声に反応するのだそうです。
教育的で子どものためになる動画を探す多忙な親にとって、Ms. Rachelはもってこいのコンテンツなのでしょうね。個人的には歌のお兄さんとお姉さん的な感じを覚えますが、こうしたヒットを生み出すのがYouTubeというところが、時代ですね…
(参考リンク)
https://www.nytimes.com/2024/11/29/business/ms-rachel-youtube-holiday-toys.html
https://www.youtube.com/watch?v=hTqtGJwsJVE&t=2408s